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 ここ最近、人工知能「AI」の技術が発達し身近なものになってきましたが、未だに総合的な人工知能においては完成されたものがありません。各分野での部分的な人工知能の技術は数多く開発され、いろいろなところで使われていますが、総合的なAIはまだまだ開発中であり、ある「壁」がこの開発を難しくしていると言われています。その壁とはどういう問題でしょうか。
 コンピュータが登場した1950年時代には、「約10年から20年後には、人工知能が開発されるのではないか」といった専門家の予測が立てられ、それと同時にAIの開発が始まりましたが、現在に至るまで完璧な人工知能というのは開発されてきませんでした。というか開発が現在でも非常に難しいことで、これをどうやってある問題を克服するか現在各企業で研究中となっています。

 その大きな「壁」である大きな問題とは何か?

 それは、1980年代にオーストリア人のロボット工学の教授であるハンス・モラベック氏を中心として明確にされた、「モラベックのパラドックス」という提唱です。
HansMoravec

 「パラドックス」というのは簡単に言うと、 逆説、背理、逆理という意味で、正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉のことを言います。

 この「ハンス・モラベック」氏が提唱した「パラドックス」というのは

「人工知能の開発においては、人間にとって高度な知能テストをコンピュータに通過させることは比較的容易なことであり、逆に一歳児の子供が身につけているような、知覚・判断・運動などの能力をコンピュータに組み込むことの方が、技術的には困難である」というものです。
 もっと詳しく言うと、コンピュータは高度な計算や分析、予測を行うのは過去のデータを蓄積していれば容易にできるが、一歳児の子供が身につけているような、知覚・判断・運動など、過去十億年もの生物の進化の過程において身についた人間の脳内にある生命が持っている感覚・運動の部分をコンピュータに組み込むというのは非常に困難であるということです。

 この生命が持っている感覚・運動というのは、生物の誕生から長い年月進化を繰り返しており、人間が考える以上にとても高度なものであり、意識することなく運動的な感覚を身につけています。この運動的な感覚とは視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚という5大感覚も含め、これらの感覚が複合して人間は無意識のうちにいろんな反応や行動をおこしています。

 これらの反応や行動というのはもちろん脳の働きもありますが、脳のほかに神経や筋肉などがお互いに瞬時に情報をやり取りし、行動や運動を発生させます。これらのメカニズムはこの生物の誕生から十億年もの長い年月をかけて作り上げた、まさしく「コンピュータ」であり「処理能力」ということになります。この長い年月をかけて作り上げたこの部分こそが、人工知能を作るにあたって大きな「壁」となり、大きな問題となっています。

 この「モラベックのパラドックス」を、もし人工知能の技術が克服できたとしたら、そのときは人工知能に「感情」を持ったということになります。この「感情」というのが、まさしく人間が無意識に行っているもので、この人工知能に感情を持たせる=人間の「脳」と「神経」のメカニズムを解明したということになります。

 人工知能の集大成である「ドラえもん」が出来るのはいつになるのでしょうか。