NECkyuu

 国立科学博物館は2016年9月6日、日本の文化や生活に影響を与え、未来に引き継がれるべき「未来技術遺産」として、日本で最も普及した16ビットパソコン「PC-9801」などを登録しました。
 PC-9801と言えばNECの主力のパソコンで、日本で広く使われていましたパソコンの名機シリーズであります。その後Windowsの登場によりDOS/V機が主流になり、PC-98シリーズは衰退していったわけですが、日本の産業や社会に大きく貢献したことが事実であります。
 そのPC-98シリーズは数々の名機を世の中に送ってきたわけですが、中には大コケした「失敗作」もありました。今回はこの大コケした「失敗作」をご紹介します。



まずはPC-98シリーズで一番の失敗作と言えば、PC-9801Uでしょう。

PC-9801U

 このパソコンはNECのPC-98シリーズの初の失敗作と言えます。
 このパソコンは他のPC-98シリーズと全くといっていいほど互換性がありませんでした。
 PC-98の初代のパソコンのメモリは片面実装でした。しかし、処理の高速化を図るために、メモリを両面にして、他のPC-98シリーズはこの方式を採用しましたが、このPC-9801Uは初期のPC-98同様の片面のメモリを実装の仕様になぜかなってしまったわけです。
 このPC-9801Uが発売されたときは、すでに世の中はメモリの実装は両面仕様があたりまえであったため、他のPC-98シリーズとメモリの使う領域が全く異なってしまったのです。
 したがって、他のPC-98シリーズのプログラムが使えないといったことから、「だれが買うんだ」といった感じになりました。
 ゲームやアプリーケーションなども当時いろいろ発売されていましたが、大抵は「PC-9801Uは除く」といった注釈があったくらい互換性がなかったパソコンです。


PC-9801VF

PC-9801VF

 当時、PC-98シリーズのスペックを上げて販売していたのにもかかわらず、なぜかスペックをグレードダウンして販売したパソコンです。
 例えば、当時フロッピーの規格は2HDと2DDの両方の対応がでいるのが主流でしたが、このPC-9801VFは2DDのフロッピーのみ対応といった具合や、メインメモリも他のPC-98シリーズは384KBに対してこのPC-9801VFは256KBにメモリの容量をダウンさせていました。
 しかも、スペックの高いPC-98とこのPC-9801VFの値段の差があまりなかったので、結局はユーザーはスペックの高いPC-98を買ったわけです。
 なぜNECは劣化版であるPC-9801VFを発売したのか、いまだに疑問です。

PC-98XA
PC-98XA

 PC98シリーズの上位機種でハイレゾ画面を搭載したパソコンです。当時はすごかった解像度で、1120×750のハイレゾ画面に24ドット文字表示という強グラフィック環境でした。当時はCADなどに力を発揮するパソコンとして期待されていました。
 このPC-98XA、PC98シリーズの延長と思いがちですが、実はPC-98シリーズとは全く異なるパソコンで販売されました。そのため、従来のPC-98シリーズとの互換性が全くなく、このPC-98XAに対応するソフトが少なすぎたため、線香花火のように消え去っていったパソコンです。



PC-9821Af
PC-9821af


 PC-98シリーズで初めてPentiumプロセッサーを搭載したパソコンです。
 当時としては最先端のCPU搭載ということで人気が出そうな感じですが、なんとこのPC-9821Afの値段が120万円でした。この当時の車の販売価格よりも高いということもあり、とても手が出せない値段でした。
 その1年後、価格が半分になり、再登場したのがPC-9821Bfです。CPUはPC-9821Afと同等のものを使用していました。
pc9821bf


PC-9821Cr13

PC9821cr13

 このPC-9821Cr13はPC-9821シリーズのノートブック型として発売されたものですが、このノートブックの最大の欠点は「大きい」ことと「拡張性がまったくない」ということでした。メーカーは「使いやすさと楽しさをスリムなボディに凝縮」ということ発売しましたが、画面が小さい、キーボードが打ちにくい(キーボードの周りに余計なスペースがありすぎる)といったことから、最初の見た目からちょっと不評のパソコンでした。

 
 こうやって見ると、NECもPC-98シリーズにかなり力をいれていて、いろいろな機種を発売していったのがよくわかります。商品を発売すればするほど失敗作なるマシーンも当然でてくるのが当たり前です。これはNECならず他のメーカーも同じです。この当時はやはりPC-98シリーズが大人気だったからこそ、このような失敗作も話題にでてくることは当たり前かもしれません。
 
 2016年、未来遺産技術としてPC-98シリーズが登録されました。このPC-98シリーズがあったからこそ、現在の日本のパソコンやITの技術が発展していったと思います。確かにPC-98シリーズは日本独自の仕様であるため、DOS/V機に負けてしまいました、しかし、逆に言うとその当時に日本独自のパソコンを作り上げていたというのは、他の世界をみてもないようなことと言えます。それだけ、日本には歴史的にみても「技術力」があるといえるのではないのでしょうか。